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【PR】データを共通言語に。部門や会社間を超えて実現する「体験創造マーケティング」の重要性

成松岳志(アスクル株式会社 ロハコ事業本部 副本部長 兼 ECマーケティングディレクター)/竹下康介(株式会社電通デジタル エクスペリエンス部門デジタルコマース事業部 部長)/甲斐博一(株式会社日本HP 経営企画本部 マーケティング推進部 部長)/古市優子(Comexposium Japan株式会社 代表取締役社長)
成松岳志(アスクル株式会社 ロハコ事業本部 副本部長 兼 ECマーケティングディレクター)/竹下康介(株式会社電通デジタル エクスペリエンス部門デジタルコマース事業部 部長)/甲斐博一(株式会社日本HP 経営企画本部 マーケティング推進部 部長)/古市優子(Comexposium Japan株式会社 代表取締役社長)

「Tech & Device TV Powered by HP」と「ad:chan」との共催で行った「withコロナ時代のコマースとより具体的な体験価値の創造」。2回目はアスクルの成松岳志氏、電通デジタルの竹下康介氏からコロナ禍の影響を解説いただき、後半では日本HPの甲斐博一氏も交えてディスカッションを展開しました。デジタルを前提に、リアルも含めて一貫した体験を設計すべき今、企業また支援側にはどのような視点が求められるのか?ぜひ、動画のアーカイブ(約45分)も併せてご覧ください。

コロナ禍で20代と高齢者の新規ユーザーが伸びたLOHACO

古市:日本HPの甲斐博一さんをホストにお届けする「Tech & Device TV Powered by HP」と「ad:chan」との共催セミナー、2回目はアスクルでLOHACOを率いる成松岳志さん、電通デジタルでデジタルコマース事業を統括する竹下康介さんをお迎えしました。まず成松さんから、LOHACOにおけるコロナ禍の消費行動の変化を解説いただけますか?

成松:LOHACOは2012年にスタートした日用品のECサイトです。顧客層は、やはり買い物時間をなかなか取れない方が多く、スーパーやドラッグストアで買い物をする代わりにLOHACOを利用いただく30-40代女性が中心です。そのため、期待される価値としてはまず利便性や簡便性ですね。一方でリアル店舗には“買い物の楽しさ”が当然あるので、そうした楽しさをECでも体感したいという期待も同じくらい高いと感じています。「ラク」と「楽しさ」をどう両立して提供するか、常に追求しています。

7年間、順調に成長してきましたが、その折で突入したのがコロナ禍です。この3カ月間で、さまざまなことが劇的に変わりました。

まず、新規顧客の年齢層が変化しました。以前は、新規顧客の8割が30-50代のセグメントでしたが、割合として10%以上減り、代わりに伸びているのがまず20代です(図1)。以前は仕事帰りにドラッグストアなどに立ち寄っていたところ、自粛要請の影響で「わざわざ出かけるならECにしよう」と選択されていると捉えています。また、60代以上も数%リフトしており、ECのすそ野の広がりが見て取れます。

図1

20代の新規注文が上昇

成松:次に、在宅時間が伸びたことで、商品をお届けする日時指定の要望が減りました。以前は半分強の顧客が日時指定を利用していましたが、緊急事態宣言を境に10%ほど落ちています。
さらに日時指定をする顧客を深掘りすると、こちらにも変化がありました。以前は仕事後に帰宅してから受け取ると思われる「18-21時」の指定が最も多かったのですが、3月から4月にかけて10%下がり、代わりに午前中の指定がリフトしています(図2)。午前中に受け取りや開梱、片付けを済まそうという意識が見受けられます。また、5月に入ると午前中の勢いが止まり、今度は12-18時が伸びていました。在宅時間が長くなり、時間をどう使おうかと模索している様子が表れていると捉えています。

もちろん、除菌剤やマスクの需要が10倍ほど上がるなど購買商品にも大きな変化がありましたが、まずは目立った行動の変化を紹介しました。

図2

受取希望時間も大きく変化

再確認すべき「ダイレクトマーケティング ≠ ダイレクトレスポンスアド」

古市:では竹下さん、ECの質の変化についてお聞かせください。

竹下:コロナ禍によって、図らずも当たり前の日常が過去のものになりました。このウェビナーも含め、テレカンが一般化し、オンライン飲み会など暮らしの楽しみ方も変わりました。フィジカルに根差していた体験が一気にオンライン化していく中で、買い物体験も変わっています。コロナ禍に突入した当初は「店舗に行けないからEC」という不便を解消する動機でしたが、不自由な環境下でだんだんEC自体が数少ない楽しみとなっていきました。

以前から、当社のデジタルコマース事業部で、EC領域の潮流をまとめていました。黎明期はニッチ市場だったのが、次第に何でも買えるようになり、翌日配達なども可能になって日用品のECも実現しました。さらにスマホの普及で決済のタイミングも自由になり、CtoC取引も増加。そして2020年以降は5Gも追い風に、体験による差別化が問われるだろうと予測していました。
それがコロナ禍により、ますます大きな変革を迎えることになりました(図3)。改めて、withコロナ、afterコロナの新しいECの在り方が生まれると考えています。

図3

ますます大きな変革を迎えることに。

そして、ECを語るにあたって避けて通れない議論として「ブランドvsダイレクト」の問題があります。ただ、私はこの議論自体に懐疑的です。対立軸があるように“見えている”のは、ダイレクトマーケティングと、ダイレクトレスポンスアドが混乱して未整理のままであることが原因と捉えています。

図4

なぜならそこには“ダイレクトマーケティング”と“ダイレクトレスポンスアド”の混乱/未整理が根底にあるのでは?

まずダイレクトマーケティングは、文字通り顧客と直接つながるマーケティングです。反応や費用対効果も即座に確認できるデジタルの特徴が定着したので、今やこうした定義をしても差し支えないと思います。一方ダイレクトレスポンスアドとは、その場で意思決定を促す広告手法です。必然的に表現はストレートで情報量が多く、「この商品をご存知ですか!? こんなにすごい機能があるんです!」「今なら〇%オフ! お見逃しなく」といった温度感の高いコミュニケーションが展開されています。

ここで前述の表現の前半部分に注目してみると、商品の機能やその裏付けとなるデータ、あるいは売上No.1などといった事項は、実はファンならば知っていて当然のことです。これらをすでに知っているファンの気持ちの積み重ねが、ブランドになっていくと思います。なので、私見も含みますが、ブランドとはよい記憶の蓄積であり、それによる顧客との関係性だと言えるのではないでしょうか。

図5

ブランドとはよい記憶の蓄積であり、それによる顧客との関係性だと言える

ただ、以前はブランドイメージの醸成も非常に広告に頼っていましたが、今は広告だけでブランドイメージがつくれる時代ではなくなっています。ブランド広告とダイレクトレスポンス広告との対立軸があるように見えるのは、このような背景があるのではと感じています。技術の進化によって、顧客に直接提供できる体験が豊かになっている今こそ、ECにおけるブランドの重要性、また顧客との関係性や体験デザインの重要性が問われています。

10年間、刈り取りに寄っていたマーケティングが補正される

甲斐:ここからは、ディスカッションを進めていきます。まず成松さん、20代と高齢者の利用が伸びているとのことですが、どのようなインサイトがあるのでしょうか?

成松:LOHACOの初回利用の入り口は、双方で異なっています。20代で典型的なのは、コスメが入り口になっているケースです。不要不急の外出ができなくなり、今までリアル店舗で体験していたコスメ選びもできない、ならばオンラインでと置き換わっているのが特徴です。一方でシニア層は、初回にお米と洗剤、シャンプーなど生活必需品がまとめて購入されており、これを機に日用品購入のチャネルをLOHACOに置き換えてみよう、という買い物の大きな転換につながる気持ちが感じられます。

もともと日本は近隣に店舗が充実しているので、わざわざECで買わなくても済んでいた人も多かったと思います。それがコロナ禍をきっかけに強制的にEC利用へと流れ込んできたので、積極的にECを選ぶ人以外にもユーザーが拡大した。これは、我々が試される初めての機会のようにも感じています。

甲斐:デリバリー業界にも、イノベーションが起きそうですね。竹下さんが解説された「ブランドvsダイレクト」の議論は、私もBtoB、BtoC領域をともに10年にわたって経験してきたので、思うところが多々あります。近年、象徴的に起きている事象などはありますか?

竹下:デジタル広告は数字が見えるからこそ、非常に“刈り取り”に偏っていました。ただ、それはファネルの一側面でしかない。今回のような環境変化の中で、改めてすべての体験がデジタルでつながると皆が理解したことで、やはり全体を見て体験を設計すべきだという流れが強くなっています。オンラインで購入する際、単に価格だけでなく、買いやすさや「このサイト/サービスが好きだから」といった選択基準も顕在化したと思います。

甲斐:日本のマーケティングは、販促の延長だとよく言われています。また、営業的側面が強いのも特徴で、それがデジタル化によって一層強調されてきました。それらを経て、いよいよ本当の意味でマーケティングをしなければいけなくなったわけですね。

竹下:その通りですね。

成松:10年前に刈り取った顧客が現在どうなっているのかも、デジタル化によって今や見えるようになっています。すると、入り口のコミュニケーションが間違っていたことにも気づけるようになる。まさに今が、マーケティングを補正するタイミングだと考えます。

デジタル活用の前にブランドの「人格」を明確化すべき

甲斐:少しコロナ禍から視点を外して、日本の経済や人口動態を俯瞰して捉えたとき、日本のマーケットでは何を考えるべきだと思いますか?

竹下: これから人口が減少する中で、今までと同じことを続けて成果を上げるのは当然厳しいです。となると、従来の常識を捨てて、新たな基準で取り組まないといけない。例えばオンラインとオフラインを分けて考えず、もはやオンラインを含めてリアルと捉える、などはもう始まっていますよね。当然、そのような理解をするためには技術のキャッチアップも必要です。

そうした中、弊社で今取り組んでいるのは、従来の縦割り組織を超えて、横断的に考え・実践することです。具体的には、まずコマースという軸で既存の組織を横断し、新しいマーケティングサービスを提供する「ADVANCED COMMERCE Lab.」という組織をつくっています。

成松:人口動態から考えると、やはり我々マーケターがすべきなのは市場創造だと思います。例えば、使用する人数が減るなら、使用頻度を高めることを考えないといけません。その際、一定の人に決まった量を使ってもらうのではなく、ある特定の人に極めて多く使ってもらうという“より深く商品を愛してくれる人”を見出していく必要があるのだろう、とか。

ブランドの話が出ましたが、ブランドとは「人格」であり、デジタルやデータはそれを生かす神経や血液のようなものだと思っています。だから、人格を構成するのが先であるべきです。人格がはっきりしないと、ブランドにかかわる人が増えたとき、顧客ごとのコミュニケーションが技術的にどれだけ可能でも、与える印象がバラバラになってしまいます。そんな状態では、特定の人に深く愛されるはずはありませんよね。

甲斐:パーパスやビジョン、あるいはストーリーが大事だと最近いわれますが、考え方や志向性を含めた人格を踏まえて、商品やサービスを提供していくイメージですね。

成松:そうです。そのうえで、ダイレクトマーケティングは人格が決まった後の会話の手法だと思っています。その人が誰かと出会ったときに、どんな内容をどんな話し方で伝えるのか? それがデジタルやデータがあると捉えています。

クライアントとエージェンシーが同じ目標を見て協業する

甲斐:では、ダイレクトマーケティングを「真に価値あるマーケティングの実践」と再定義するとしたら、今日のテーマである体験の創造や体験価値の向上のために、何から着手すべきでしょうか?

成松:やはり起点は、まず人格を定め、顧客に何ができるかを見極めて、それを実現するデジタル活用の実践を組織化していくことだと思います。それを前提に、その人格が会話するのは誰なのか、どのくらいの人数と会話するかを考える。昨日会った人もいれば10年前から旧知の人もいるでしょうし、数も10万人かもしれないし1000万人かもしれない。仮に1000万パターンの会話が生まれたときに「このブランドならこう返ってくるはず」と期待に応えられるシナリオを設計することが次のステップでしょうか。

甲斐:顧客理解ですね。それはマーケティングの仕事そのものだと思います。とはいえ、データでわかることは行動に偏りがちです。

成松:そうですね、行動や購買のデータはとても重要ですが、「なぜ?」という行動の原因まではわからない。そのための調査も多々ありますが、気持ちの部分も含めてデータ化できるビジネスをつくることも大事だと思います。例えばLOHACOでは、カスタマーレビューのデータを重視しています。そこには購入理由や満足・不満、推薦するポイントが含まれているので、「なぜ?」を知るための大事なデータソースです。それを理解した上で、課題の解決を考えるようにしています。

竹下:体験の創造という観点で考えると、例えば前述の横断組織の構築でも、ひとつ上の目的を共有できると良質な体験を皆でつくれるようになります。横断型は互いにぶつかり合うことも多いのですが、結果的に体験価値が高まります。組織はどこからでも変われますから、とにかく変われるところから推進しなければと感じています。

甲斐:それは社内の組織構築だけでなく、クライアントとエージェンシーの関係構築にも当てはまりそうですね。体験価値の向上のためには、双方で協業して、より高いレイヤーの視点を共有する必要があります。

竹下:エージェンシー側は、どうしてもツール提供などに話が寄りがちですが、それはあくまで手段です。まず目的は何かを常にクライアント含めて皆で共有し、定期的に立ち返ることが重要だと思います。

個人情報取得のフックはない 真摯に価値を返していく

視聴者からの質問:顧客と直接つながるにはユニークIDの取得が必要ですが、顧客が「自分のデータを提供してでも企業とつながりたい」と感じてもらえるためのフックは?

竹下:私は仕事柄か、自分の情報の提供にあまり抵抗がないのですが、やはり「得られる価値が大きい」と思ってもらえなければデータの取得は難しいです。ただ単に営業DMが送られるだけでは情報を提供しようとは思いません。そこはしっかり価値を提示することが大切です。

成松:同感です。さらに、いかに透明性あるコミュニケーションをするかが大切ですね。このブランドに情報を提供することで自分が何を得られるのかを、もっとストレートに話してよい時代が少しずつ来ています。本当の目的を隠しながら情報を得ようとしても、隠せば隠すほどかえって怪しく感じてしまいます。

だからこそ、皆さまからお預かりする個人情報の使い方やお返しする価値、またそれによって世の中をどうしたいのかについて明確なメッセージを発信することが重要だと思います。顧客からの信頼に信頼で応えることを続ければ、クレームになることはそうないはずです。実際、当社も同意の上でデータをメーカーと共有することがありますが、それがよりよい商品の提供につながることをしっかり伝えていますので、ネガティブな意見をいただくことはほぼありません。

甲斐:データ提供に関する許容度は、欧米や中国に比べて日本はかなり低いそうです。これに対しては、日本のマーケターのスキルを上げないといけないと思いますね。例えば無料サービスをきっかけにID情報を取得するのも手法としてはありますが、透明性の観点からは問題です。データをお預かりする限りは必ず価値を返す。ここに業界を挙げて取り組まなければいけないと思います。だから、フックのようなものはない、真摯に向き合うしかないですね。自戒を込めて。

さて、ここまで体験の創造をテーマにお話ししてきましたが、顧客の体験は3つの段階に分けられると考えています。中心的に議論してきたECもそうですが、まず購入時の体験。次に、商品やサービスを使い始める導入時の体験。そして、それらが生活やビジネスシーンになじんでいく、生活体験。これらは通常、社内の別部署で担当されていることが多いですが、これらをつなげて体験を設計するのがマーケターの仕事だと思います。これを「体験創造マーケティング」と定義し、ここの発想が普及していくと顧客もより幸せになると思います。

図6

体験を設計するマーケティング

古市:最後に、今後?マーケティング業界で行うべきことについてメッセージをお願いします。

成松:甲斐さんの「体験創造マーケティング」の考えには強く共感します。これを実現するための部門間や会社間の共通言語として、同じデータを使うことが重要なので、データ整備は必須です。その上で、マーケティングの仕事はやはり人を喜ばせることが使命です。コロナ禍によって皆さんの生活が変わっている時期をむしろチャンスと考え、驚きや喜びのある体験を一緒につくっていきたいです。

竹下:エージェンシーとしては、クライアントとともにしっかり生活者を見ていくことが大切です。各社によるよいブランド体験の積み重ねこそが、“afterコロナ”の新しい生活様式をつくっていくので、「提供したい価値とは何か?」に常に立ち返りながら活動していけるとよいと思います。

甲斐:体験の創造に欠かせないのは、顧客理解です。ただ、コロナ禍によってフィジカルな顧客接点を設けるのが難しくなっているので、企業側には今回再定義したダイレクトマーケティングへ予算をシフトして、新たな展開に取り組まれてはいかがでしょうか。併せてエージェンシーやサプライヤー側には、そういった提案を積極的にしていただけると、体験創造マーケティングの実現に近づくと思います。

古市:皆さん、ありがとうございました!

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*1回目、2回目共通です

第1回「Postコロナに向けた消費者動向変化をアメリカに学ぶ」
日時:6月30日(火)16:00~17:00
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第2回「Postコロナに向け日本のマーケターがやるべきことを中国事例から考察する」
日時:7月10日(金)19:00~20:50
ゲスト:株式会社ビービット執行役員 / 合同会社宮坂祐事務所代表 宮坂 祐氏

<登壇者>
成松岳志
アスクル株式会社
ロハコ事業本部 副本部長 兼 ECマーケティングディレクター

竹下康介
株式会社電通デジタル
エクスペリエンス部門デジタルコマース事業部 部長

甲斐博一
株式会社日本HP
経営企画本部 マーケティング推進部 部長

<MC>
古市 優子
Comexposium Japan株式会社
代表取締役社長

アーカイブ(約45分)はこちらから

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